#002 世界23か国の若者を対象に「自然とのつながり」を測った結果

Soga, M., & Gaston, K. J. (2025). Cross-country variation in people’s connection to nature. One Earth,  8 (2), 101194 https://www.cell.com/one-earth/fulltext/S2590-3322(25)00020-X

一言まとめ:「2023年、世界23か国の若年成人およそ22,000名を対象を対象にアンケート調査をして、「自然とのつながり」を多面的に評価した結果、その強弱が社会経済開発レベルや生物多様性などの国レベルの要因と、教育や社会的地位などの個人レベルの要因の両面によって大きく左右されることが明らかになった」

 下記のTweetで知った論文。

 このアンケート調査では、「自然とのつながり」を(好き/嫌いではなく) 心理的な部分 と 物理的な部分 の両方から聞いていて、具体的には、以下の7つの指標で質問しています。

  1. 自然との一体感: 自分と自然をどのくらい重ねて感じているか
  2. 自然から得られる個人的利益: 健康や気分転換など、自分自身が得られるメリットへの認識
  3. 自然から得られる社会的利益: 自然が社会のために役立つとどれだけ考えているか
  4. 自然への懸念: 過度の森林伐採や生息地の破壊などをどれくらい心配しているか
  5. 自然保護への態度: 環境保全活動や政策をどれくらい支持しているか
  6. 直近の自然体験: ここ最近(数週間〜数か月)でどれほど自然の中に出かけたか
  7. 子どもの頃の自然体験: 幼少期から学生時代にかけて、どれくらい自然に触れる時間があったか

ことを示すようになっています。

面白い調査結果はいくつもあって、例えば、「1. 自然との一体感」や「5. 自然体験の頻度」は国によって顕著な差が示されています。エジプト、インド、フィリピン、トルコなどでは、「1. 自己と自然が重なっている」と強く感じる人が多く、たとえばINSスケールの値が5以上(7段階中)と答える人が70%を超えますが、一方、オーストラリア、ドイツ、日本、イギリス、アメリカなどではその割合が40%未満と、全体的に低い傾向が。そして驚くべきことに、ドイツ、ロシア、トルコでは、「6. 直近の自然体験」「7. 子どもの頃の自然体験」について、「週1回以上」と回答した人の割合が70%を超えています(森の中を散歩することが趣味の人が多かったりする?)。 一方で、ガーナや日本では、その割合が40%未満とかなり低いです。ちなみに、日本は7つの質問項目で、全般的にもっとも低い水準を示しています。

もう一つが、7つの測定指標同士はすべて正の相関を示すものの、その相関係数はそれほど大きくはないという結果で、例えば、「1. 自然との一体感」と「5. 自然保護への態度」は肯定的に結びつく一方、完全に重なるわけではないことがわかります。「自然とのつながり」のどの側面に注目している研究か、という具体化のステップが、これからも重要になりそうです。

国レベルの要因を見ると、生物多様性が低い国ほど、人々の「4. 自然への懸念」が弱いという結果に。人々がすでに生物多様性の損失した状態に慣れてしまい、基準が下がる「シフトしたベースライン(shifting baseline)」の可能性が示唆されています。 ただし、こうした国であっても「5. 自然体験の頻度」は意外にも高いことがあり、高い生物多様性をもつ地域の場合は、そこに潜む潜在的リスク(猛禽類や有毒生物など)との接触を避けるためにあまり出歩かないようにする、という傾向も垣間見えると。あと、耕地面積比率が高い国では、「1. 自然との一体感」が低くなる。これは、大規模で集約的な農業(モノカルチャーや化学物質の大量使用など)が、人間が自然を支配するといった価値観を醸成しやすいことが原因かもしれないと考察。

個人レベルの要因を見ると、社会的地位・教育水準が高い人ほど、7つの指標すべてで自然とのつながりが強い。都市部では所得の高い層ほど緑豊かな地域に居住する傾向がある「ラグジュアリー効果(luxury effect)と関連が考えられると。これは予測されていた通り。あと、都市部に住んでいる人ほど、「6. 直近の自然体験」「7. 子どもの頃の自然体験」が低いという、いわゆる「経験の消失(extinction of experience)」現象が確認されています。 一方で、都市住民ほど「2. 自然からの個人的利益」「3. 自然からの社会的利益の認知」「4. 自然への懸念」「5. 自然保護への態度」は高い傾向も見られます。これは都市部ほど環境教育や啓発活動が集中する、というある種の逆説によるかもと。

この調査結果をふまえて、それぞれの地域で、社会的実践理論の枠組みで分析・比較したら面白いだろうなあと雑感。

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