研究について
研究の方向性
「大加速」は、いくつかの指標において減速しつつあります。この減速は社会の持続可能性・再生可能性を向上させるための移行にとって何を意味するのでしょうか?
「大加速」とは、1950年代から見られるGDP、人口、都市化、交通量、森林破壊、汚染などの急激な増加を指す用語です。人類が地球の生態系に及ぼす影響を浮き彫りにする概念として20年前に提唱されました。多くの指標では、2000年代に入ってもこれらの指標は成長を続けていますが、一部では鈍化が報告されています。減速は人々と生態系にとって利益をもたらしうる反面、混乱と摩擦をもたらすことが懸念されます。
気候変動、資源の枯渇、社会的不平等、政治の不安定性など、人類が直面する問題は複雑であり、それぞれが互いに影響を及ぼし合う「厄介な問題」です。これらの問題に分野横断的に対処し続けるための方法を、【食と農】【倫理学】【ゲーム】を起点として模索しています。
3つの研究領域
大きくわけて、以下の3つの研究領域で活動をしています。
食農倫理学
フードシステムをより再生可能なものにするために不可欠な、様々な関係者や組織の連携と協力、相互学習のための場作りを、食農倫理学の観点から提案しています。
環境倫理学
10億人を越える世界人口の半数以上が都市圏に住み、「大加速」が鈍化しつつある時代の環境倫理学の貢献のあり方を模索しています。
シリアスゲーム
社会課題や環境問題をテーマにしたゲームを使った非公式の学習やワークショップを実践・研究しています。ゲーム制作イベント「シリアスボードゲームジャム」をこれまで4回開催しました。
業績一覧
出版物
翻訳
- ポール・B・トンプソン『〈土〉という精神』(農林統計出版, 2017)
- ポール・B・トンプソン『食農倫理学の長い旅』(勁草書房, 2021)
- ヨルゴス・カリス『LIMITS』(大月書店, 2022)
編集
- 学術誌『Food Ethics』
- 学術誌『環境倫理』
イベント
- アジア太平洋圏食農倫理会議第4回大会(オンライン, 2020)
- アジア太平洋圏食農倫理会議第5回大会(名古屋, 2023)
「シリアスボードゲームジャム」
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- SBGJ2018「良い食とは?」@地球研
- SBGJ2019「独りで食べている人なんていない」@地球研
- SBGJ2021「食べることのジレンマ」@オンライン
- SBGJ2022「食卓からは見えない風景」@くまもと森都心プラザ図書館
その他
2020
- 「厄介な問題としての環境社会問題に取り組む超学際的手法としてのシリアスゲームの共創」(地球研, プロジェクト紹介ページ)
2021
- 「持続可能な、持続させるに足る社会の姿を食から描く」(2021, 南山大学, 教員紹介ページ)
- 「ボードゲームからゴリゴリの専門書の翻訳まで 食農倫理学者の驚きの振れ幅」(2021, マイナビ農業, インタビュー)
- 「シリアスゲーム座談会:シリアスゲームについてゲームジャムの面から可能性を考える」(2021, DiGRA JAPAN, 座談会)
2022
- 「倫理学者に食肉倫理を扱ったカードゲームをやってもらうとどうなるのか?:シリアスカードゲーム『マナーな食卓』のゲームプレイから」(2022, 遅いインターネット, 座談会)